〈『異聞』公開記念〉姉妹対談・物語の裏を暴き立てる!②

了子:あれっ? つまり私は乗せられたってことか(笑) あの魔女伝説も、けっこう作り込んでいるよね? あと「王の歌」なんかもそうだけど、小ネタにすごく手が込んでいるものがある。あれ、長歌だよね?

佳子:そう。長いヤツは一応、『万葉集』時代の5・7調リズムで作ってある。『古今集』ぐらいの時代になると7・5調になっちゃうんだよね。できたら旋頭歌(5・7・7)とかも作ってみたかったんだけど、そこまでの歌才が私にはない(笑)

了子:いや、作れるだけいいと思うよ! プロの歌人じゃないんだから。

佳子:何といっても恥を捨てることがポイントだと思う。特に詩って恥ずかしいもんだという先入観があるのよ、私には。でも、不思議と和歌とか俳句なら比較的てらいなく作れるというか。長歌じゃない、ただの詩として「始まりの魔女の歌」(7章末)を書いたときは何だかすごく違和感があった。

了子:なんとなく分かる気がする。『指輪物語』でもビルボおじさんが長い叙事詩を詠っていたりするけれど、あれを日本人の私が真似ようとすると・・・何だか非常にこっぱずかしい! でも「始まりの魔女の歌」は一応頭韻を踏んでいるよね。日本語で韻を踏むってメッチャ大変でしょう。

佳子:あれ、元ネタが『エッダ』(韻文)だからぜひ頭韻でと思って頑張ったんだけど、いかにも無理やり臭が漂っている・・・。とはいえ韻文の力ってすんごいと思う。あるリズムとか特定の韻律に則ったものを作れば、何となくそれっぽく見えるという。文語定型詩ってすさまじい安心感がある。それに安住することをよしとしない人たちが自由律を始めたんだろうけど、あまり評価されていない。

了子:一定の型の中でいかに新しい表現を生みだすかという問題があるから、定型詩の方が高尚なものと見なされやすいんだろうね。私はどっちも嫌いだったなあ。国語の中で一番点が取りにくいし。古文自体が苦手で、その上和歌っていわれるともうorz そういえば、「諒王挽歌」はまだ公開してなかったね。※この対談のアップと同時に目次ページにリンクを張りました。

佳子:あ、あれか。『万葉集』所収の挽歌を切り貼りしたようなもんなんだよ、あれ。だいたい挽歌って定型の対句表現が多いから。ほら、結婚式のスピーチとかお葬式での弔辞とかってある種の「お決まりのパターン」ってあるじゃん。あんな感じよ。

了子:ははは。そうだよね。あんまり型破りすぎると逆に見識を疑われる(笑) ところで、一読者としてはもう少しあんたにも物語を書いて欲しい訳よ。できたら『異聞』以前の時間軸を。今後の予定は?

佳子:いや、こっから先は姉貴が書く番だよ。何らかの必要があって、『異聞』と接続する必要があるときの資料として年表をあげたじゃん。でも姉貴のバラン篇と関わる時間軸って『異聞』よりも遙か前か、もっと時代がくだっているよね? たぶん。

了子:まあね。バランが引き継いでいる騎士の記憶を「思い出す」時に、『異聞』以前の時間軸が登場しそう。知恵ある龍たちの戦争とか。実際、バランの時代は『異聞』が書き上がった時代よりも50年ぐらい後ということで考えている。

佳子:じゃあ、姉貴が勝手に騎士の記憶をでっち上げればいいじゃん。

了子:まあ、そう言ってもらえると書きやすいんだけど。私が書くと龍人たちはみんな変人というかかなりの変龍になると思う。

佳子:それでいいんだよ。人間にも龍にも属さない特異な存在だし。語り手に人間を設定する以上、基本的に「変な奴ら」として語られる存在だもの。

了子:あれれ、原作者のお墨付きをもらっちゃった?

佳子:『異聞』をアップしてくれたお礼だよ。もともと翻案権にはこだわらないつもりだし、やりたい放題書いてよ。年表だっていくらでも改変すればいいじゃん。あの年表、私自身もけっこう改変しているから、小説本文とデータがずれているんじゃないかな。

了子おいおい。そんなんでいいの?

佳子:公開する前提で年表は作っていないからね。

了子:私はゆくゆくアップしようと思っていたわ。あとで誤差がないか確認してみよう。ところで『異聞』の表側、龍と生き残りの龍人たちとアデーレが絡むお話は書かないの? プロットもストーリーもほぼ固まっていたじゃん!

佳子:今はあまり小説モードじゃないんだよね。おとんの介護の合間を縫って夏前までに2本ほど論文も書かないといけないし・・・。今まで少し離れていたテーマをもう一度取り上げる予定で、ちょっと下調べに時間を取られるかな。

了子:息抜きに短篇でもいいから書いたら? あのプロット表にあったいい人そうに見えてかなり変人なカンラートさんとか、高所恐怖症の翼龍と高所恐怖症のドラゴンライダーのペアとか、ワイングラスばかり作ってる変な龍人のお話を読みたいんだけど!!!

佳子:・・・考えておくよ。期待されるのはうれしいけどさ。体はひとつしかないからね。それより姉貴も早くバラン篇を書いてアップしていきなよ。まだ魔界に下っていないんだよね?

了子:ううう、まだ龍の騎士として覚醒していませんorz

佳子:こんな対談企画していないで自分の作品書かなきゃ!!!

了子:スンマセン。ちゃんと書きます。