ダイ大の謎「騎士の認知度は? テランの助力はあえて受けなかった?」―独断と偏見32

※どうも略字体の「竜」が好きではないので、作品からの引用以外は「龍」の字を使っています。読みにくかったらすみません!

ずいぶんこの連載も間が開いてしまいましたね(- -;;
これでは「ダイ大」ブログを名乗る資格がなくなってしまうwww
一応(一応(@@)!!?)、ダイ大ブログなので、SSの筆が進まなくてもこちらの連載は続けていこうと思っています。

さてさて。改めて仕切り直し。ダイ大の謎シリーズの再開です!
テランという土地。ここも私としては不思議だよなと思うところなんです。龍の神をまつる神殿があって、龍の騎士にまつわる伝承が残っていて、国民なら紋章を見ただけで龍の騎士様だと判別がついてしまう。まあ、神殿に紋章が刻まれていますし、あの周辺に住んでいてお参りしていれば(しているのかな?)、「ん? 見慣れた形だ。えっ、あれは!!!」ってことになるんでしょう。

まあ、当然といえば当然なんですが、ザボエラからの「額に紋章のようなもの」という情報だけでダイが龍の騎士(というか自分の生き別れの息子)だと気づくのがバラン。人間で最初にダイの紋章についての情報からダイの正体に気付くのがマトリフ。紋章そのものを見てダイが龍の騎士だと気づくのが、テラン出身のナバラさんとメルルとなっている。

で、実は面白いのはザボエラは紋章そのものを見ているのに、ダイが龍の騎士であると気づいていないというところなんですよね。魔族の間で、あるいは魔界でも、龍の騎士ってそれほど認知度があるわけではないのかなあ。
ザボエラよりも若いハドラーはかなり早い時期に初見で気付いているのに(一応「魔王」を名乗っている以上、気を付けるべき対象として知識としては知っていたのか? それともバーンからバランを紹介された折に紋章を見ているんだろうか?)。

バランは当然として、98歳で魔法使いとして博識を誇るマトリフでさえ、何らかの書籍(古文書?)を調べた上で、「竜の…紋章だっ…!!!!」と結論付けているっていうところが、人間一般への認知度の低さをうまく物語っていそうな気がする。しかも時系列で考えると、マトリフさん調べるのにそこそこ時間がかかっているっぽいんですよね。マトリフさんが「竜の紋章」と気づくのが、ダイ、レオナ、ポップの3人でベンガーナに買い物に行く直前、71話の「デパートへ行こう!」の巻。

でもコマやセリフの感じとして、ポップがマトリフさんにダイの紋章を描いて見せたのはそれより前で、たまたま「竜の紋章」と判明したタイミングでポップが再訪していると読める。マトリフさんがポップからダイの紋章の図柄を教わったのは、時系列的には、フレイザード戦後にダイ、ポップ、マァムでマトリフのもとを訪ねていた時なんでしょう。
これって『JUMP COMICS PERFECT BOOK 1 ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(集英社、1995)に掲載されている年表でいうと、バランがカールを壊滅させた日(36日目)の翌日か、翌々日あたりではないか?

マトリフさんが情報をつかんだのが仮に37日目とすると、「竜の紋章」と判明してポップに「ダイの力になってやれ」といって送り出すのがベンガーナへ気球で移動する直前。移動日は42日目ということになっているけど、コマ割りからは、当日なのか翌日なのか不明。(ポップが置いてきぼりを食いそうになったのは、直前までマトリフさんのところへ行っていたからなのか? それともたまたま王宮内の離れたところにいたのか?)少なくとも、情報を受け取って紋章の正体が判明するまで4~5日は要している(まあ、「後で調べよ」と思って放置していたって可能性も高そうだけどw)。

実際に現物をみてダイを龍の騎士と認知しているのは、ナバラとメルル。初見の読者はここから、ようやくダイの紋章とダイの正体を具体的に知っていくことになる。74話「巨大竜(ヒドラ)をたおせ!!」の巻の最後のコマで「あ…あの紋章は…まさか…!!?」という発言が出てくる。このコマには2人が描かれていて、ナバラが前面に出ている。おそらくはナバラが叫んだセリフという扱いなのだろう。で、次の75話「吠えるダイ…!!!」の巻で、いよいよナバラとメルルによって「竜の騎士」という単語が出てきている。

と、いうわけで、博識を誇る魔族及び人間の魔法使いよりも、テラン在住者の方が「竜の紋章」と「竜の騎士」について具体的に知っているという構図が見えてくる訳なんですが。うーんやっぱりちょっと不思議だ。まるでご当地キャラみたいな扱いなんだけどwww(あっ! やばい!! 紋章閃が飛んで来るかも!!!)

くまモンは上皇&上皇后陛下にも謁見しているし、TVに登場していることもあって日本国内の認知度は高い。でも、千葉県の公式キャラクターのチーバくんとか埼玉のコバトンとかって、たぶん全国レベルでの知名度ってないと思うんですよね。
龍の騎士様には悪いけど、ちょっとそんなことを考えてしまった。まあ、失礼のないように言うならば、ご当地限定で信仰されている神様に近いですよね。アマテラスとかスサノオみたいにメジャーじゃない。東北地方で祀られることが多いオシラサマとか、先島諸島のアカマタ&クロマタみたいに認知度も信仰される範囲も限定的。

こういう作品内の設定なり描写なりを見ていてやっぱり思うのは、ダイ大の人間世界に限るならば「竜の騎士」=「ご当地信仰」ほぼ確定だよなあってことなんですよ。
現代の世界で考えると、たとえばキリスト教はやたらと布教しまくったから「十字架」=「キリスト教」って感じで世界的に認知されていると思うんだけど(うーん、仏像とかはどうなんだろう? アジアの仏教文化圏以外の人があれを見て、仏教に関係する像だってわかるのかな?)。紋章を見て「あれは!」と即座に反応するのがテラン出身者のみだから、土地に根差した信仰ってことになる。

そうなると、、、考えられる可能性としては3つなんじゃないかなあ。

①そうとう昔(伝説化されるぐらい昔)、テランの地域一帯に住んでいた人間を、龍の騎士が何らかの脅威から守った実績がある。

②そうとう昔(伝説化されるぐらい昔)、テランの地域一帯に住んでいた人間が、何らかの事情で龍の騎士によって粛清されたことがある。

③そうとう昔(伝説化されるぐらい昔)のある一定の時期まで、龍の騎士は必ずテランで産み落とされて育てられていた。

信仰対象になるぐらいですからね~。この3つ全部当てはまる可能性があってもおかしくないと思うんですよ。もしかしてマザードラゴンの出産場所があの神殿のあたりだったんじゃないかな。そうじゃなければ、国民全員がダイを抱えてきたマザードラゴンに手を合わせたりしなさそう(信仰対象でないなら、突然巨大なドラゴンが現れたら怖いよ)。

さらにメルルによる解説だと

すさまじい力を誇り あらゆる呪文を使いこなし 天と地と海をも味方に変え
すべてを滅ぼす者とされているのです…

『DRAGON Quest・ダイの大冒険』第6巻(集英社文庫版、2003年)P107

と言っていまして。ここから推察するに、龍の騎士は全くもって現世利益的な信仰対象ではないし、救世主信仰の対象でもないんですよね。ナバラも「救世主なのか破壊者なのかはわからない」って言っている訳なんで。どことなくヒンドゥー教のシヴァなんかとかぶる感じかもしれない。あの神様も、究極的な破壊者という側面と、めちゃくちゃ慈悲深い側面が同居しているし。
これ、本居宣長が「神」について解説していたことともかぶるなあ。神様って普通ではない優れた力を持っていて恐れ多い存在を指すけれど、善いことをしたり功績があったりといい方向に優れているだけではなくて、悪いことをしたり不気味だったりして普通ではなく恐れ多い存在も神と呼んでいるってニュアンスのことを書いていたんですよね。

閑話休題 次の問題です。バラン自身はこういう自分の「ご当地キャラ」的側面(失礼!)を把握していたんだろうか?
テランの湖底にある神殿に行っているぐらいだから、あのあたり一帯では、ややこしい説明をしなくても自分が龍の騎士だって分かってもらえると予想はできると思うんですよ。んで、人間、しかも王族に属する人間たちとの間でのトラブルを抱えてしまったわけで。政治的に、極めて戦略的に解決しようと思うんだったら、テランに助力を求めてしまうっていうのも選択肢としてはアリだと思うんですよね。一読者としては。

もちろんドライブのし方によっては、これがきっかけでテランとアルキードの国家間で争いが起きる可能性もあるし、国同士の力関係が変わる可能性もあるし、人間と龍の騎士との関係性が変わる可能性もある(両国に挟まれるベンガーナがどう反応するか…)。だから本当に最後の手段的な位置づけではあるんだけど。でも、テラン王国が形式上バランの後ろ盾になることで、一部の問題は解決しませんかね?これ。

まず「魔王の手下の生き残り」説は消えるし、テランという弱小国家ではあるけれど、歴史ある国から身元保証のお墨付きがつく訳で。むろん、アルキード側からすると、テランによって自国の王位継承者である王女を奪われたっていう反発が起きそうですけど。そこは竜の騎士との共同統治ならテランという国ごとアルキードに差し出すってところまで行けると思うんですよ。王族だけでなく国民の合意だって取り付けられそうな気がする。
だって最強のご当地キャラじゃん(←違う)

なんだろうな? 人間に借りを作りたくなかったのかな? ただ単にそういう交渉力とか政治力とかが著しく不足してたんだろうか? 後者なような気もするんだよな。人間に育てられていたのならば、ある程度人間がどう動くか、どう反応するかは予想できるだろうに(- -;;
人間ではない存在である自分のきわめて個人的な問題に、第三者である人間を関わらせたくないっていう配慮だったんだろうか?
どうでもいいけど、もうちょっと図々しさを発揮するなり、誰かしらに甘えるなりして上手く立ち回って欲しいところだよなあ。

とはいえ、バランと龍の騎士に関しては、この作品中ではある種の「ブラックボックス」扱いなので。詳細が明かされないことによって、作品全体の物語を成立させる「担保」みたいになっている部分だからしょうがないと言えばしょうがないんでしょうね。人間の養親とか育てられ方、テランとの関わりなんかは作中で全く触れられていませんから(だから勝手にでっちあげられるんだけど)。

了子