改めて最終決戦読み返すと、バーン様が気の毒になる……。自分たちは清く正しく弱い「被害者」なのだから相手に対して何をやっても許されるんだって勘違いしていませんかね? 自分たちもやっていることはすさまじく汚くて残酷ですよ? そのことを自覚していますか? と声を大にして言いたくなる。
たぶんこのことについてそこそこ自覚があるのはアバンだけなんじゃないか。それを多少なりともレオナに伝えようとしたのに、全然伝わっていないんじゃないか。「憎まれ役を演じる」って自分と相手の汚さを認めて受け入れた上でそれを利用するってことだと私は解釈しているんだけど、彼女にそれができているようには見えない。
個人的には神の涙(ゴメちゃん)の最後の願いのところで、「世界中の人々の心をひとつに」って言っていて、バーン様にだけ声が聞こえていないのもどうかと思った。彼の心まで「ひとつに」なることは無理でも、声ぐらい届けてもいいんじゃないのか。
つまりダイとか勇者一行が言う「みんな」の範疇からバーン様だけは徹底的に排除されているわけで。「悪」と名指しした者を排除する「正義」。それは「正義」という看板を掲げた「悪」でしかない。たぶん彼さえも排除せずに取り込めるような論理こそが本当の意味でのベストな在り方で、それって一見すると全く「正義」には見えないんじゃないか。不可能に見えるかもしれないけれど、「力こそ正義」という同じ土俵に乗っかった上で話を詰めるしかないんだろうな。バーン様とヴェルザーが協定を結んだように。
そういうわけで、
個人的にはものすごーく人間側の主張する「正義」って薄っぺらだと思う。
まあ、「閃光のように!」とか言っちゃって、長い時間をかけて生きてきたバーン様よりたかだか数十年しか生きることのない人間を賛美しちゃっているぐらいだから、漫画全体のテーマが「薄っぺらさの肯定と賛美」なのかもしれないけど(←かなり原作者に失礼だろw)。樹齢数千年の巨木を「邪魔だから」という理由で伐採しちゃうような、凄く短絡的で近視眼的で傲慢な考えとも相通ずるよなあ。
っていうか、そもそもレオナ自体が極めて薄っぺらな存在として描かれているように思うのは気のせいなのかw たかだか地上のパプニカという一地方で姫として生きてきた14年程度の見識で、万単位で生きてきた存在の思想や行動原理を「悪」と断じる。そのことの傲慢さにレオナ本人は全く気づいていない。バーン様を傲慢だと思うのはレオナ本人が傲慢であることの裏返しなんだけど、そういうことに思い至るだけの智慧も有していないし。
何でこんなにレオナに辛口かっていうと、
実はリアルタイムで読んでいた頃はレオナってかっこいいなと思っていたクチなんですよ、私は。
黒歴史だなw
まあバラン戦ぐらいまでしかまともに読んでいた記憶はないんですけど、当時は正々堂々と言いたいことを言ってみんなを先導するリーダータイプの女の子だって思っていました。
大人になってから再読して、一番評価がガタ落ちしたのが彼女でした。あれをかっこいいと思っていた自分って子供だったなあと。自分の狭い見識に基づいて「正義」と「悪」のラベルを貼っているし、自分に都合の悪いことはみんな「悪」だし、偉そうにキレイゴト言っているけど言動に責任が取れていない。あなたのキレイゴトを叶えるのは臣下であったりお抱えの勇者様だったりするわけで。そしてそれが当然ってスタンスだし。
逆に悪役というかアンチヒーローだけど意外とまともなヤツじゃんと思ったのが知っての通りバランで。立場上、神の代理人として三種族のバランスを崩す者をやっつけているわけだけど、声高に「正義」とか言っていない。特にダイとの決闘の後ではそこが顕著で、バーン様の最終目的が地上の破壊だと知っても「この私にも考えがある」と言っているだけ。やっぱり大人だし、戦歴が長いだけあるよね。「正義」と「悪」なんて立場次第でいかようにも変わっちゃうしね。
ダイとレオナ、バランとソアラの関係を見ていて思うのは、これ、最終的にダイとレオナはくっつかないんじゃないかなあってこと。ヒーローとヒロインがくっつかないなんて身も蓋もない未来予想図だけどw だって『ダイ大』におけるヒロインポジションを占有しているのはポップだしw まあ仕方ないか(笑)
レオナって無自覚なまま支配欲がダダ漏れしている感じがしていて。私が男だったらああいう女だけは願い下げだな。相手がダイで年下だからかもしれないけれど、ちょっと見下している感じがするし。
ぶっちゃけ、レオナってダイを自分の都合のいいように支配してコントロールしているし、そうしたがっているよね。対等な関係じゃない。バラン戦で記憶を失っている最中も、親であるバランを「敵」だと決めつけてともに戦うことを強要していたし。バーンパレス第二戦でハドラーと戦う時も、決闘をやめるようにと口を出して相手が自分の言うことに従わないとなると、「いつの間にこんな大人っぽい顔するようになったのよ! コイツったら…!!」(『DRAGON QUEST・ダイの大冒険』第16巻 集英社文庫 2004年、P197)というモノローグ吐いてるし。
これってダイを下に見ていないと出てこない発想だと思う。完全に見下していて自分が支配しているという感覚が背後にある。そしてそのこと自体に無自覚。男性って女性からこう思われることに喜びを感じるんですかね? 尻に敷かれている感覚? 私はこのシーン、かなり気持ち悪い思いをしたんだけど。女の醜い支配欲を感じるし、女性として嫌悪感を覚える。もし私が男だったらコイツを殴っているよw
特に最終決戦では違和感を感じまくるんですよね。ダイの完全回復を待っていたバーンに「こけおどし」と言ってみたり、「……悪魔だわ…この男…!!」と独白してみたり。たぶん自分が理解できないこと、自分が理解できる範疇を超えたものは全部「悪」って設定なんだよね、レオナの中では。
そしてダイに「何があっても……おれはおれだ…!」「みんなのダイだよ!!」とまで言わせているし。見下していたわりにはダイに気を遣わせているし。何があっても信じて見ている度量がない。絶望的に決定的にない。
極めつけは、ダイが紋章を全開にする(龍魔人化する)ことを決意したシーン。「やめてぇぇっ!!!」っとかほざいてるし。戦ってもいないのに悲劇のヒロイン気取りはうんざりですわ。あなたが嫌悪している龍魔人の力こそがあなたの命を救うって場面なのに。「ダイ君がダイ君でなくなっちゃう」と言っているけど、言い換えると「自分が理解して支配できるダイではなくなる」ことに待ったをかけているだけ。ポップの「たとえどんな姿だろうが…ダイはダイだっ!!!」っていうセリフの方が本来のヒロインがかける言葉じゃないのかなあ?
どう見ても私にはこの最終決戦がダイとレオナの決別フラグに感じられる。思春期前半は女の成長は早いけれど、思春期後半から青年期にかけては男性の成長って早い。このままレオナに精神面での成長がない場合、ダイに三行半を突きつけられる可能性が高いのではないかなあ? 私は、ダイはレオナとお別れしてもっとふさわしいパートナーを探した方が幸せだと思うなあ。
私は男性っていい意味で向こう見ずなところを持って成長していくところがあると思っている。そしてついつい安定志向に落ち着きがちな女性からすると、予想の斜め上を行く冒険をするところがあると個人的には思っていて。未知の世界へ飛び出していく、型に収まらない一種の荒々しさがあって、その点では女に太刀打ちできない強さがある気がする。ある種の「やんちゃさ」みたいなところ、理解不能なところを許容しないと男性の男性らしさを潰しちゃうんじゃないかな。
物語には一切描かれていないから私の勝手な推測と妄想ですが、こういう点での度量と器があったからソアラはバランと添い遂げられたのではないんですかね? 龍の騎士ってよく分からないけれど、どんなことが起ころうとこの人と人生を歩んでいく。どんな困難も自分事として引き受けていく。そういう腹の決め方をしないと、国を捨てて駆け落ちできないよね。もう少しソアラについて描いて欲しかったなあ。メインで登場する女性キャラの人格ががあまりにしょぼい気がするんだけど。
で、ここからが私の最大の暴論なんだけど、実はレオナにとって最もふさわしいパートナーってバーン様じゃないの?って思うんですよ。自分の理解を完全に超えた存在で、自分の見識がいかに狭くて、その見識をもとにした判断を相手に押しつけることがいかに傲慢か。そのことをしっかりと思い知らされて、はっきりと悟れる相手になると思う。一切のキレイゴトが通用しない。支配することはできない。むしろ支配下に置かれる可能性が高い。
ダイの場合、緊急時に若干人間からかけ離れた姿になるけれど基本的に見た目は人間。バーン様は魔族にしては人間に近い肌の色をしているとはいえ、完全に異形。耳は尖っているし、角つきだし、サードアイ開いてるしw たぶん物語後の時間軸で、レオナはモンスターや異種族との融和政策を打ち出すんじゃないかと予想しているんだけど、キレイゴト言っていないで魔族との融和政策の一環としてバーン様と結婚できるか? 寿命が違うから歳をとったらあっさり捨てられそうだけど、上手に関係を築けるのなら相当精神的に成長するんじゃないかな。でもとてつもなく苦労することは確実だよなあ。
ヒロインとラスボスの結婚って、どういうバッドエンディングだよ!? と正直思いますけどw この二人、不思議なぐらい合わせ鏡としてぴったりくる気がするんだよね。
(おわり)
了子