かれこれ不寝番も3週間目に突入。残念ながら母と私(佳子)しか父とは同居していない状態なので、昼夜2交代制を敷くしかない。姉貴(了子)は少し遠いところで独り暮らし、弟は比較的近いけど休日出勤が多くて頻繁に帰ってこられない。そうすると、たいていは私が深夜から早朝、母が早朝から午前中を担当するしか、互いの睡眠時間を確保する方法がないのである。
先週半ば、入所希望の申請を出していた老人健康保健施設(老健)から、入所の許可が下りた。入所にあたって主治医の診断書が必要なため、通常より1週間早く病院へ向かった。診断書に必要な検査を受けるためである。今朝の就寝は5時、起床は8時の3時間睡眠で運転だ。非常にキツい。片道たった40分とはいえ、カーブがきつい道で見通しが悪く、初心者には難関な道なのだ。夜勤後に睡眠不足のまま翌日の勤務に突入するようなもので、本当に参る。
今朝の起床後から父は文字どおりの「きかん坊」で、こちらの言葉には馬耳東風なのに自分の要求は通すという一番厄介なコンディションだった。なぜか2週間に1日ぐらいこういう時期が来てしまう。それでも、病院で検査を受けるまでは比較的おとなしく車の後部座席に座っていてくれた。しかし、検査後帰宅してからはからっきしダメだった。ま、分からなくもないところはあるんだけど。
父は脳梗塞で倒れて以後、高次脳機能障害を持っている。痛いこと、気の進まないこと、嫌いなことをされたり、強要されたりすると怒りを抑えられない。採血、耳鼻科検診、レントゲンなどに耐えられず、家族や看護師さんが押さえつけて強行することになる。そうでないと、誰彼かまわず殴ってしまうからだ。よって本人、家族ともそれなりに消耗して病院から帰ってきた。が、父だけは怒りのはけ口を求めるだけの元気があったらしく、元気に徘徊してくれた。私は睡眠をとろうとして15時ごろと20時頃に布団に入ったけれど、いずれも1時間と経たずにたたき起こされてしまった。暴力が始まり、母だけでは押さえきれなかったからだ。
今(深夜0:30)もトイレに行った後は全く寝る気配がない。睡眠薬(ゾルピデムとトリアゾラム両方である!)を飲んでいて、足元がふらついているのに室内をうろうろと歩き回っていたので、やむを得ず車いすに乗せてベルトを着けさせてもらう。そうしないと段差に足を引っかけて転んだり、ハサミなど危険なものをいじったりして目が離せないのだ。以前も、「毛布を切断したい」と訳の分からないことを言って庖丁を持ち出そうとしたことがある。もうこうなると身体の自由を奪う以外に方策がない。
父:「ほのベフト取ってよ(このベルト取ってよ)」
※睡眠薬で半分寝ぼけていてろれつが回りきっていない。
私:「ベッドに入って寝る?」
父:「ほれ、とって(これ取って)」
私:「眠くなった? ベッドで寝る?」
父:「イヒャだ。これ取ってよ」
私:「ベッドに入るなら、取ってあげるよ」
父:「寝るのはつまあない。腹減った。何か食べたい」
万事がこんな調子である。しばらくすると父は熱心にリモコンをいじり始め、それにも飽きるとテレビに見入る。そしてしばらくするとまた上記のような会話が繰り返される。シュールだ。シュールすぎるよ、全く。困ったことに、全く眠そうにしていない。やれやれ。結局ベッドに入ってくれたのは約1時間半後、午前1:55だった。
老健はあくまで在宅復帰を目的として入所する施設だ。たいていは3ヶ月、長くても半年ぐらいしか入所できない。だから12月半ばから長くて2月いっぱいまで、2ヶ月半の予定だ。寒い時期に寒い我が家で頻繁におむつ交換をすると、風邪をこじらせて肺炎にでもかかるのではないかという危惧もあって入所を決めた。ケアマネさんには反対されて、母が強引に押し切ったようなもんなんだけど。むろん、私たちの体力や気力もけっこう限界に来ているというのも大きな理由だったりする。
この老健は、原則として身体拘束をしない方針をとっている。建物自体が徘徊したい人は自由に徘徊できるように設計されている。フロアが回廊構造になっていて、廊下には全面に手すりがついている。そういう環境でしばらく過ごすことで、①足腰に筋肉をつける。②常に「かまってちゃん」な状態から独りで過ごせるようになる。③要求が通るまでわめき続けることをやめる。という変化が起きることを期待しているのだ。特に③は家族だから「要求すれば何でもかなえてもらえる」という甘えがあるように思う。施設に入所するとそういう訳にはいかないので、退所後には現状よりも少しましになるのではないか。
少しでもいいから現状よりも前向きな変化があれば、まだ在宅介護を続ける余地はあるかもしれない。でも、これが現状で打てる最後の方策だ。これで全く改善の余地が見られないなら、やはりどこかに預けることを視野に入れないといけないかもしれない。ずっと拘束されたままになるのは気の毒なんだけど、これじゃあ父より先に母や私が死んじゃうよ。せっかく落ち着いてきたと思っていたんだけどなあ。
佳子