コントミンとセルシンの同時摂取が予想以上に効きすぎてしまい、歩行状態が悪化の一途をたどったこともあり、急遽父を病院へ運搬。と、いうのも順調だった休薬にも支障が出て来てしまったからだ。
減薬~休薬の間は比較的穏やかだった時期もあった(特に私がブチ切れて「お前の面倒は見ん!」と言ってからの2日間はおとなしかった)。なおかつ、昨日の朝と一昨日の夕方にはキチンとトイレで排便できていたのだ。これってめちゃくちゃ画期的! だって今までおむつにしてしまっているのにその自覚さえないことがほとんどだった。もっとひどいときはおむつ交換中に排便してしまって、その事実に気づかずに歩き出してしまったこともある。
そういう状況を経験してくると、自分からトイレに行きたいと言い出して便座に座り、そこでしっかり排泄できたということに感嘆してしまう。この他にも、薬を抜いたせいなのか、こちらの介護指示をよく理解できていたり、説得に応じてくれたりとそれなりに利点があった。
しかし、昨夜は残念ながら逆戻りしてしまった。夕食後に一寝して起き出してからがまずかった。「2人いる中村さんのうち1人と話をした」などと意味不明なことを口走り(夜間せん妄か?)、夕食後たった2時間しかたっていないのに何か食べ物をくれと(いつもどおり)主張した。そこまではいい。食べ物はもうないと言ったら納得して引き下がった。
その後、「ベッドに寝かせてくれ」と言うのでベッドに寝かせても、すぐに起き出してきて何度も何度も同じことを要求する。母が「どうせ眠くないんでしょうからもう少ししたらやってあげる」と言ってその要求を何度かはねつけると、相当な力で母を殴りつけた。こうなると私の出番なのである。むろん、本来なら危険を伴うので女が対応すべきではないし、鎮静剤なり安定剤なりを飲ませるのが筋なんだろう。しかしそうした薬を投与しても副作用で歩行困難(最終的には寝たきり)になる可能性が高いので、何とかそういう強烈な薬なしで押さえ込んでいる。
私は幸い、父と戦っても力負けしない。開口一番「人を叩かない、殴らない!」と父の目をしっかり見て叱りつける。それで「ごめんなさい」と言っておとなしくなるときもある(こうなるまでには数々の戦いがあった)。しかし、抵抗して殴ってこようとするときもある。そんな時は両手を押さえつけて攻撃をブロック。その上で「暴力はダメだよ!」と叱る。残念だけど、昨日はこれで済まなかった。かなり強烈なパンチをお見舞いされたので、両手を取ってタタミに押しつけて尻餅をつかせた。これで足腰の弱くなってしまった父は立ち上がれず、抵抗できなくなる。すかさず、「叩かない、殴らないというルールを守れない奴は、家から出て行け!!!」と叱る。
だいたいここまで言うとさすがの父もおとなしくなる。それでもダメなときは「決まりを守れない人間はこの家に置いておけない」と言って室内から半室外とも言えるサンルームのような場所へ隔離してしまう。そこは本当に何もないので、窓ガラスにさえ気をつければ怪我はしないが、座ることもできない。さすがの父も根負けしてくれる。本来であれば父親がする役割を、完全に私が肩代わりしている状態だ。本当にやれやれと思う。
結構きかん坊だった私は、父によって家からたたき出された経験があるんだけど、まさか父にやり返す日が来るとは夢にも思わなかった。いい加減しっかりしてくれおとんと心から思う。完全に子ども返りしている状態なんだけれど、建設現場で培った腕力はそこそこ健在だから厄介この上ない。しかも食欲だけはなかなかおとろえないので最近太ってきて体重もある。たたき出すにせよ助け起こすにせよ重労働だ。
で、前置きが長くなったが(っていうか前置きだったのか?)セルシンやコントミンの代わりとして抑制目的で処方されたのが抑肝散(よくかんさん)である。本来は子どもの夜泣きを抑える薬として古来から使用されてきた漢方薬である。これが認知症(特にレビー小体型やピック病)の陽性症状に効くということは近年広く知られるようになったらしい。ちなみにここでいう陽性症状とは、徘徊、暴力、暴言、幻覚、介護抵抗、食欲の異常昂進、夜間せん妄など活力がふさわしくない形で表出した症状を指すらしい。
逆に活力がないために起きてしまう弊害を陰性症状と呼んでいて、気力の低下、気分の落ち込み、引きこもり、自殺願望、食欲低下など、まあ元気がなくなって鬱っぽくなる症状が挙げられていた。これって全く父に当てはまらない! 本当に父は漢方の証の見立てでいくと陽体質なんだなって思う。赤ら顔、固太り、頭のてっぺんがはげているとかはマクロビオティックの体質診断なんかでも陽体質の特徴として出ていたけれど、まさにその通り。今は薬のせいで低いけれど、かつてはめちゃくちゃ高血圧だった。上が180で下が90ぐらいとか、下が3桁だったこともあった。それも50代後半の時点で。そりゃあ、動脈も硬化するって。
そんなこんなで父は昨夜、何回も起き出しては奇妙なうわごとをいいながらうろうろうろうろしていた。抑肝散は今日のお昼から飲ませ始めたけれど、今(0:30)もやっぱり眠らないでうろうろしている。睡眠薬(トリアゾラム)を飲んでいてもである! まあ、こちらの言葉は通じていて「寝よう」と言えばベッドに入るからとってもましな方だけど。下手をすると夢遊病のように半分意識がない状態でうろうろするから、介護者としては危なっかしくて寝ていられない場合もあるのだ。訳の分からないことを言って、こちらがそれを理解できないと殴ってくることなんかもあるから、本当に夜間せん妄(?)には大弱り。暴力と並んで何とか治まって欲しい陽性症状の筆頭だわ。
佳子