さてさて、すっかりこのシリーズも更新が途絶えているんですが、このサイトは一応「ダイ大二次創作」が二本柱のうちの一つなのでこちらも更新。
とはいえ、このアルキード事件関係については原作上でほとんど触れられていない部分なので、想定と推定の上に想像の尾ひれをつけるような内容になってしまうんですよね。原作のこの部分はあくまで主人公の出生を語ることに主眼が置かれているのであって、バラン側の事情はストーリー上必要なことしか開示されていない。これはヴェルザー戦に関することなんかも共通していて、黒の核に関することとか殺気という点ではまだダイはバランに劣るとか、そういうストーリーの解説上に必要な情報しか提供されない。
よって読者がコミックだとかパーフェクトブックなどの副読本から収集できる情報を読み込んだとしても、全く分からないところ、空白でありブラックボックスという形でしてしか存在していない内容なんですよね。
だいたい主人公の出自か主人公の父親の出自ってわざと謎に包んでおくっていうのが英雄譚(ヒロイックストーリー)の典型パターンな訳で。桃太郎は桃から生まれているし。スターウオーズのアナキン・スカイウオーカーも父親がいない(母の胎内にフォースが宿ったって可能性が示唆されている)。イエス・キリストだって「神の子」ってことになっているし。ギリシャ神話の英雄なんかも「ゼウスの子」として語られたりするし。
ある種の箔付けのために父親および父親の父親は不明だったり、異常出生または神様の子どもだと示唆されることが多い。これは世界共通なんだよね。日本だって『古事記』に登場する火遠理命(ホオリノミコト:神武天皇の祖父)は母である木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ)が産屋に火をつけたせいで燃えさかる産屋の中で生まれているし。
閑話休題。そういうわけでダイ自身も(一応)典型的な「英雄」として描かれているんだけど、私なんかはひねくれ者なので、このわざと空白にしてブラックボックス化しているところの方が気になってくるんですわ。スターウオーズもあとからエピソード○という感じでアナキンのお話が制作されましたが、こういうところって基本的に読者なり視聴者なりの関心を買いやすい部分なんじゃないか(お前だけだよと言うツッコミをしたい方もいるかもしれませんが)。
つまりここで語られているのは、
①当代の龍の騎士であるバランは例外的に人間との間に子を儲けた。
②それは紋章がある以上ダイ以外にあり得ない。
③なんで生き別れてしまったのか?
この三点を説明するためだけの語りなんですよね。そもそもラーハルトというキャラクター自体が寡黙で必要以上のことを語らなさそうなタイプとして造形されていますし。これ、原作終了後に無事に戻ってきたダイと再会したら、ダイの求めに応じて何かをしゃべるんだろうかってことも考えたりするんですよね。バランについてダイのために語れるのは自分だけだということをラーハルト自身が自負している可能性は高いです
し。
で、前置きが長くなりましたが(前置きだったのかよ)、あの文官らしき人は「人間ではないようです」ってなんで核心を突くようなことを言えたんだろうか? どこでどういう情報を得たんだろうか? ってことが非常に気になります。当然、将来の王配候補ともなればかなり身元調査をされるとは思うんですよね。今だって皇族と結婚する人ってやはり身元が確かかってことを根掘り葉掘り調べられるみたいですし。
そうなるとやはり文官ってことがキーポイントな気がする。部下を総動員してバランの身元を調べたのではないか。私はバランが「神の子」として育てられたって想定をしていないのでご覧の通りの少年時代を描いているわけですが。もし仮にテランあたりでマザードラゴンからバランを預かった人がいて、本当に「神の子」として育てられていたのなら、その情報を悪用すれば「人間ではない」って結論づけられそうだとは思います。
でもテランのフォルケン王はおそらくバランと面識がありませんでしたし。テラン領内でマザードラゴンから直にバランを預かった人がいるなら、王様に報告が行くだろうし。もっというと当代の騎士様が現れたとなれば、王よりも上の扱いで王宮に準じる場所で養育されただろうと思うんですよね。
そしてもし、そうやってバランが育てられたのなら、ソアラに助けられた時点でテランに連絡を入れてもよかったと思うんですよ。「魔界での戦いから帰ってきて、隣国の王女様に助けられたよ」って連絡すれば、テランから騎士様のお迎え部隊とアルキード王国へのお礼部隊が大挙してくるでしょう。そうなればテラン王家の身元保証がある人物なんだってことはアルキード王を始め全臣下に周知される。むしろアルキード王からうちの娘を嫁に、あるいはできたら婿に来てよって話が持ちかけられてもおかしくない。全く問題が起きません。(でも『ダイ大』は始まりませんw)
っていうかこういう設定でのIF話も書いてみたくなった。絶対バランのキャラが180°変わっちゃいそうだけど。紋章発動後に少し性格変わるだろうけど、幼少期は甘えん坊のわがままなお坊ちゃまとして育ってしまいそうだwww どうなるんだろう???
『ダイ大』を『ダイ大』として成立させるためにかなり色々な意味で犠牲になっているのがバランとソアラ夫妻なんだろうって気がするんですね。色々設定に無理が多い。無理が多いからあえてしっかり書き込まない。空白にしておく。それでもその空白に切り込んで、いくつかの仮説を立てるって作業がこのシリーズなんですが・・・。
可能性として一番ありそうかなって思うのが、身元調査と足取り調査をした時に、ちょうどアバンVSハドラーの時期にバランが地上を留守にしていて足取り不明だったってこと。それが「バラン=魔王の手下の生き残り」って説につながってしまったのではないか。バランがバカ正直に「龍の騎士」って名乗っていたら、さらにそれが「人間ではない」説を上書きしそうな気がする。
でも、もしバランから「龍の騎士」といわれたとして、アルキードの文官達は何をどう調べたんだろう? あの博識を誇るマトリフ師匠でさえ、ポップから渡された紋章の図を古くて分厚そうな本を見て「龍の騎士」だって結論づけている。一応一国がやる調査だから、役人達が手分けして相当数の古文書を当たるって作業をしたのかな?
そしてもう一つ分からないなって思うことが、あの世界での「龍の騎士」の位置づけ。テランでは神様に準じる扱いを受けているみたいではあるけれど。ナバラさんなんかは、どんなむちゃくちゃなことをしたって「龍の騎士様のやることだから仕方がない」って感じだった。でも古文書を見ていたマトリフさんはすごーく顔をしかめていた。
マトリフさんにモノローグで
もしあいつが
本当の竜の騎士
だとしたら・・・!?アバン・・・おまえは
なんてヤツを
育てちまったんだ・・・『DRAGON Quest・ダイの大冒険』第6巻(集英社文庫版、2003年)P14
って言わせている。場合によっては人間に牙をむくかもしれない存在をご丁寧にも強くしてしまったってことだろうとは思うんだけど、どういう存在として書かれていたのか? あるいは、ごく一部の人しか知らない存在なんだろうけれど、その一部の人間によってどのように語り伝えられていたのか? 単純に「英雄」として語り継がれていないことは確かだとは思うんだけど、過去に龍の騎士が人間に牙をむいたことがあったんだろうか? で、結果として「怒らせるな危険!」「触るな危険!」っていうことになっているんだろうか?
どうもバラン自身が語っている龍の騎士の設定を読む限りでは、龍の騎士が人間を敵認定する可能性ってかなり低そうな気がするんですよね。
だが この3つの種族は
世界の覇権をめぐって
血で血を洗う争いを続けた
それをうとましく思った
神々は考えた
この世界を粛清する者が
必要だと!(中略)
ゆえにいずれかの種族が
時として野心を抱き
世界を我が物にせんと
したら・・・それを滅ぼし
天罰を与えるのが
竜の騎士の使命なのだ!!『DRAGON Quest・ダイの大冒険』第6巻(集英社文庫版、2003年)P131
これ、あくまでバランがダイを魔王軍に引き入れるために、けっこう人間側に不利な形にある程度歪曲している可能性もありそうな気がする。話術的な意味で、バランって戦略的に嘘をつくようなことはさほど得意そうではないけれど、話を盛るぐらいはしていそう。
巨体とパワーを誇る龍と魔法力にたけていて強靱な肉体を持つ魔族に、人間がそこそこいい戦いができたのか? 人間が魔界に侵攻して魔族の集団と一戦交えられるって可能性はあまりなさそうですし。あり得るとすれば、地上で生活していた龍との生存権を巡る争いとかかもしれない。それこそ魔の森みたいな感じのところで、人間の生活圏の隣に龍が生息している場所があった場合はそれ相応に争いは起こるでしょうし。
そうなった場合に龍の騎士が龍側につく可能性は否定できない。何気にバランは龍に敬意を払っているような発言しているし。
話を戻しますと、王配候補と目されて身元調査が入った時に「人間ではない」と思わせる決定的な何かが文官達の目にとまったんだろうなというのが私なりの推測です。で、王配候補ってなっている時点で実は語られていないけど後ろ盾となった人間がいただろうって想像しています。そうでなければ、唯一(と他に兄弟がいた描写がないのでそう推定できる)の王位継承者となる女性に、行き倒れていた一介の戦士が近づけなかったと思うんですよね。
っていうかマザードラゴンに言いたいんだけど、分かりやすくテランに降臨して衆目のあるところで龍の騎士を置いていってくれ。それじゃあ息子が甘やかされてしまって騎士として立派に育たないと思うなら、預ける人間をしっかり選んでくれ。っていうかむしろあなたが育てなさい。
了子