あとがき

解説

当ページをご覧頂きありがとうございます。
一応、「あとがき」ですが、まだ本文をお読みになっていない方もいらっしゃるかと思います。
ですので、本篇中で起こる事件などについて言及しません。「どんな作品なのか分からないけど、あとがきから読んでみよう」という方も、安心してお読みいただけます。

この作品は2008年頃に第1稿ができあがりました。その後7~8回ほどの改稿を経て2009年頃に現在の形になっています。その過程で当初9章構成だったものが10章になったので、おしまいの2章は前半の他の章と違って2節分の分量しかありません(汗)

何だか尻すぼみで情けない形態かなとは思ったのですが、完成後既に5年以上が経っていて、今さら大幅に加筆修正することにためらいがありました。まあ、一応完成してすでに筆を置いたのだから、これはこれで何らかの形で公表しようではないかと。それと・・・本業が忙しいのを理由に公開先や公開方法を探すことを怠ったまま、ずっとお蔵入りしていたので、「とにかく何でもいいから日の当るところに出しておけよ」と作品それ自体にせっつかれているような感覚があるのも事実です。

また、縦書きで書いていた作品なので、年月日などがすべて漢数字で表記されています。若干読みにくいのですが、とりあえずこのままで掲載してみることにしました。後日もしかしたら修正するかもしれませんが、原稿用紙で換算すると550枚を超える分量なので(←常に原稿用紙換算しちゃうところが職業病だわ)、いかんせん面倒くさい(笑)

書架ページでも少し触れていますが、この『東方魔女異聞』という作品は、物語世界の大きな歴史の中から数ヶ月分を切り抜いたものにあたります。いろいろ書きたいネタはあるけれど、まずは手近に書けそうなところから文章化していったらこういう作品になったわけです。語り手の限界と物語の限界がほぼイコールな関係で、かつ解説者も「ご承知のとおり」「詳細は別の研究書にゆずるが」とばかりに寡黙な態度を貫いています(研究書のテンプレですね)。

ある意味では本作品の主人公でもあるアデーレ(本名:シャニィ・テイリール・ディル・ソレティア)は、語り手であるリェイジュンの目の届かないところで世界を駆け回っています。本来であれば、彼女が駆け回る世界がいわば「物語の表側」で、この作品は「物語の裏側」にあたるといっても過言ではありません。背景としてそれなりに「豊穣な闇」を抱えてはいるわけです。

とはいえ、「物語の表側」はいまだに書かれていません。作品を制作するに当って作成した「年表」上に存在するだけの「いまだ語られざる物語」です。誰にも読まれることのない書物に書物としての存在意義がない以上に、語られることも聞かれることもない物語は物語そのものが存在しないこととまさに同義といえましょう。巨大な空白であり、闇であり、「無」であるものの上に、この物語は(いやこの物語に限らずあらゆる物語は)成り立っているともいえるでしょう。

以上のような経緯の果てに「年表」という形でしか存在しない物語のかけらを、年表という形のまま姉貴・高山了子にに委譲しています。姉貴は私の「年表」に『ダイの大冒険』のオリジナル年表と彼女がでっち上げた年表をリンクさせる形で二次創作の物語を紡いでいるようです。

この『東方魔女異聞』という作品自体はここで閉じられていますが、もしかしたらこの物語世界は別の機会に別の形で再び語り出されるかもしれません。

つたない作品を最後までお読みいただきありがとうございました。

まだお読みでない方は、こちらを読んで少しでも作品に興味を持っていただけると幸いです。

高山佳子